スキー場における事故防止対策
 

  一般に何らかの事故防止対策を検討するとき、第一に考えなければならないのは、人間はミス
 を犯すものであるということである。スキー場における事故も然りで、直接原因としてはスキー
 ヤー、スノーボーダーあるいはその他の人自らが何らかのミスを犯したことにより発生したもの
 と推定される。
  だが、自らがミスを犯したものであるから事故を発生させた責任は、全て本人にあると考える
 べきではない。人間は本来ミスを犯す者であるから、このことを前提に、ミスを犯しても事故を
 発生させない、あるいは負傷程度を軽減させる事故防止対策を予め考えるべきである。
  第二に、スキー場においては、ゲレンデ内の全ての施設、設備はスキー場経営者の所有か、あ
 るいは管理下にあり、また、ゲレンデ内に立ち入る許諾権も所有しているのであるからスキー場
 における事故防止対策は、スキー場経営者側が中心となり取り組むべきである。
  以上を前提に、収集したスキー場における死亡等重傷事故を分析し、以下のとおりスキー場経
 営者並びに競技者(スキーヤー、スノーボーダー等ゲレンデで滑走する者及び立ち入る者を言う。
 以下競技者と言う。)それぞれに事故防止対策を提言する。


         スキー場の取り組む事故防止対策

1、ゲレンデ内あるいは隣接する施設、立ち木その他の物に対して衝突事故を防止するための
  措置を講じること。(衝突防止ネットの設置又は防護マットの取り付け等)

  死亡等重傷事故を分析すると、事故の型別では衝突による事故が最も多く、その中でも立ち
 木、支柱、杭等に衝突したものであります。最も典型的な事故事例は、スキーあるいはボード
 のコントロールを失い、コース外に飛び出してコースとの境界付近にある立ち木等に衝突する
 ものである。従って、コース外に飛び出すことを防止する措置を講じるか、あるいは衝突防止
 ネット又は防護マットの設置が必要です。過去の事故事例を検討し、施設、立ち木、支柱等の
 物に対して本質安全化を講じることが重要です。これだけで、死亡等重傷事故の約半分を減少
 させることが出来ます。

競技者にヘルメットの着用を徹底すること。
  死亡等重傷事故を分析すると、受傷部位では頭部を負傷するケースが圧倒的に多い。衝突事
 故でも転倒事故でも受傷程度を軽減させるためにも頭部を防護することが重要です。
 ヘルメットを着用しない者はゲレンデ内に立ち入らせないことが必要です。競技者の協力が
 不可欠ですが、ヘルメットを所持しない者に対してはヘルメットの無償貸与(一定の金額を予
 め徴収し、ヘルメットを返還時に返金する方法)を検討する必要があるのではないでしょうか。

ゲレンデ管理を徹底すること。
  死亡等重傷事故事例にもあるとおり、アイスバーン状態で滑走中に被災したケースも散見さ
 れることから、営業開始前までにゲレンデを点検し、危険の有無を確認することが必要です。
  また、天候の悪化によるガス等の発生により視界不良になることも予想されるので、常時ゲ
 レンデの状態を監視する体制を確立することも必要です。

適正な入場者数を定め混雑時の入場制限を徹底すること。
  死亡等重傷事故事例を見ても、土日曜日に発生した事例が多い。ゲレンデが混雑することに
 よる事故発生が予測されることから、毎週末あるいは年末年始時には入場制限を徹底すること
 が重要です。

スキーヤーとスノーボーダーとの住み分けの要否等を検討すること。
  死亡等重傷事故事例を見ても、スキーヤーとスノーボーダーの衝突による死亡事故も発生し
 ています。本来、スキーとスノーボードは滑走する方法等も異なるものであるからゲレンデは
 別にすべきであろう。
  しかし、最近の傾向を見ると同一ゲレンデを使用しているスキー場が増加している。だとす
 るならば、同一ゲレンデを使用するスキーヤーとスノーボーダーの事故を防止するためのルー
 ル作りを行い、これを両者に徹底することが必要です。

事故発生時の救急体制を整備すること。
  被災者の救命のためには、早期治療が重要であるが、一般にスキー場は山間部にあり専門診
 療機関から遠隔地にあるのが実態である。しかも、冬季の交通事情も加わり救急車を呼んだと
 しても、診療機関までの搬送に相当時間を要しているのが現実であろう。
 このため、先ず、事故の早期把握が重要で、各ゲレンデに監視員を配置するとともに、被災
 者を搬出する機械類の備え付けも必要です。また、受傷部位の多くが頭部であることから一刻
 を争うものであり、少なくとも事故発生件数の多い週末にかけては救急車の待機等も検討する
 必要があります。

事故事例等から再発防止対策を検討する委員会を組織し活動させること。
  日本全国のスキー場では、一シーズンあたり数万件の事故が発生していると推定されます。
 また、各スキー場でも過去の事故事例を含めますと相当数の事故事例の蓄積があるはずです。
 これらの事故事例を分析することにより、事故の原因を把握し、それに応じた対策を検討する
 ことが必要です。要は、同じ原因での事故を繰り返さないことが重要です。



     競技者(スキーヤー、スノーボーダー等)の取り組む事故防止対策

決められたルールは守りましょう。
  スキー場では、コース内ではむやみに立ち止まらないこと、話し込まないこと、休憩はコー
 スの隅で休むこと、前方を滑走している者を優先させること等ルールを定めております。
  これらのルールは絶対に守らなければいけません。ゲレンデで滑走するのは山スキーとは全
 く異なります。ルール違反は即、事故につながります。自らの体を守るためにも、また、加害者
 とならないためにもルールを守ることが大切です。

ヘルメットは必ず着用しましょう。
  スキー場で発生する死亡等重傷事故の六割が、頭部を受傷したものです。頭部を受傷します
 と、重篤な事故となり「死亡」につながる危険があります。
 受傷程度を軽減させるためにも必ずヘルメットを着用しましょう。

技量を過信しないようにしよう。
  スキー場では、毎シーズン30名前後の方が亡くなり、この他にも事故後、意識が戻らない
 方や後遺障害で苦しんでいる方が大勢おります。
  人は、残念ながらいつか、どこかでミスを犯す危険性を持っています。滑走中にミスを犯せ
 ば事故につながります。自分だけは、事故を起こさない事故に遭わないなどと言うことは絶対
 にありません。自分の技量を過信せず、スピードは控え気味に、行動は慎重に。
  また、全くの初心者に対しては、各スキー場で講習会等も実施しておりますので積極的に参
 加しましょう。

仲間とは連絡を取り合いましょう。
  死亡等重傷事故事例の中にも、受傷後相当時間経過後に発見された事例もあります。友人、
 家族等複数でスキー場に来られることが多いと思いますが、いったんコースに出ますとばらば
 らで滑走するものです。定期的に場所を決め同伴者の行動を確認することが大切です。

時間に余裕をもって行動しましょう。
  死亡等重傷事故分析結果からは、疲労が原因で事故が発生したか否かは明確に判明しません
 が、事故要因としては十分考えられます。また、コース内での疲労による事故発生もさること
 ながら、帰宅途中の交通事故も懸念されます。スキー場から帰宅する際には、充分な休養を心
 がけることが大切です。
  更には、乗用車内で仮眠中に乗用車が雪に埋まり一酸化炭素中毒で死亡する事故も発生して
 おります。仮眠や休養する場所にも注意が必要です。



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